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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
二十
そう思いながら歩いて行った。
(それにしても松平冬次郎様、草紙洗い小町の謎を解き、望みの品を手に入れた上、お浦を返してよこすであろうか? ……謎が解かれるか解かれないか、これには疑問あるにしても、お浦を今夜中にかえすこと、これには毫も疑いない)
そう思いながら歩いて行った。
裏町は暗く人通りなく、冬近い風ばかりが吹いていた。
二十
と、人声が行手から聞こえた。
(はてな?)
と貝十郎は耳を澄ました。
(聞き覚えのある声ではあるぞ)
で、家の蔭へ身をひそめた。
そうとも知らぬ二人の男が、話しながら近寄って来た。
「雲を掴むような探しものさ」
それは外伝の声であった。
「八百八町広い江戸の、どこへ素ッ飛んで行ったものか、見当のつかないままごと狂女のお浦、そいつを今夜中に探して来い! ……この冬次郎様の無理難題、こいつにゃア全く弱らせられる)
これは新助の声であった。
「無理難題といったところで、元々俺らがやりそこなって、得体の知れねえ変な野郎に、十手でしたたか撲られた上、お浦を逃がされてしまったんだから、文句のいえた義理じゃアねえが、弱ったことには違えねえ」
「たしかこの辺でやられたんだな」