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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

三

と。

「もちろん!」

と範之丞は言下にいった。

「しからば明夜お討ちなされ」

それから熊太郎は冬次郎によって、計画されている明夜の討ち入り――否、潜入について物語った。

三

物語ったといっても熊太郎は、範之丞の人物性行に、不安を感じていたからであろう。「田沼の新邸逃げ水屋敷へ、明夜拙者と冬次郎様と、潜入いたすことになりおります。当夜は饗宴がござりまして、九十郎めは警護の士として、臨席することになりおりますとか、ついては貴殿も我々とともに、明夜該屋敷へ参り、九十郎めをお討ち取りなされ。それに関しては冬次郎様へお目通りいたすこと必要でござれば、明早朝おいでなさるよう」

こういって冬次郎の隠れ家の所在を、仔細に明かしたばかりであった。

そこで範之丞は今日早朝、冬次郎の隠れ家へ伺候した。

一眼見て範之丞は冬次郎の、素晴らしい人物に景仰してしまった。

と、その冬次郎が五人の者へいった。

「どれ、それでは逃げ水屋敷の、外廓なりと日のうちに見よう」と。

こうして六人来たのであった。

六人は先へ歩いて行く。

逃げ水屋敷が眼の先に見える接近した地点までやって来た時、六人の者は唖然としてしまった。