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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

冬の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页

青空文庫

その時代には体格も気力も旺盛のように見えるから何の不養生をしてもさほどに弱らない。何を食ても平気だよ。三日位徹夜したって何ともないと無闇に威張てわざわざ極端な不養生を自慢するのがちょうどこの時代の人たちだ。その不養生が積もり積て三十五歳以上四十歳以下の年齢に不治の病気を発する。その時になってモー後悔しても追付ない。これは畢竟監督者なしに社会へ産み落されて野放しにされるからだ。何ぼ放任主義がいいといって一、二歳の小児を台所へ手放しにしてみ給え。毒な物でも何でも口へ入れるだろう。三十歳前後の男子が社会へ野放しにされるのはちょうどそれと同じ事だ。生命の上からいってもその通りだが事業の上から言っても三十歳前後の人は多く無理ばかりする。僥倖で小さな成功をするとさも自分の技倆のように慢心して忽ち手一杯な仕事にかかる。それがために生涯の大失敗を招くもの比々として皆なこれなりさ。四十歳までは誰でも小児時代勉強時代と心得なければならん。四十歳を越してから初て社会の大人になれる。しかるにその小児時代を野放しにするほど憐むべき事はない。親がなければ親戚の老功者に監督してもらうとかあるいは誠実なる先輩に保護を頼むとか、何でも一人の監督者を得なければならん。