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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
第三百五十六 琴一曲
それを考えたらむしろ国費を以て良乳を廉価に供給すべしとこう申した処が到底行われませんけれども政府の当局者はその位な意気組を以て牛乳事業を監督してもらいたいものです」と相も変らぬ長談義の中に前なる皿はいつの間にか新しき品と更れり。
第三百五十六 琴一曲
新しき品はアスペーキゼリーの鳥料理、それに続いてシャンパンのポンチも出でたり。アスペラガスへクリームソースをかけたるものも出でたり。クリームソースとは白ソースにフレッシクリームを混ぜたるもの、ここにおいて衆客は中川に聞きたるクリームの真味を賞しぬ。野菜料理の次が七面鳥のロースなり。製法は外の肉の上等ロースに同じけれども前胃に豚と犢の砕き肉を詰めたるは一段の味を添えぬ。続いて出でたるサラダロアイヤルは林檎とセロリーの細かく切りたるを上等のマイナイスソースにて和えたるもの。アイスクリームはパインナプルの味を含み、レデーケーキは先に衆客が目撃せし所。外にデザートの干菓子あり林檎に柿の果物あり。珈琲はモカの上等を用い、一品一物皆なこれ卓上の珍ならざるはなし。食事おわりて会衆が暫く休息せし後主人の広海子爵は当日の余興にとて姫君の玉江嬢に琴一曲を弾ぜしめたり。