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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
第二百九十六 松茸売
勿論世間の娘には私よりも見識のある人があってそういう場合に、よくこそ他人の借金を引受けてくれる、よくこそ物足りない貧乏世帯から半分の収入を借金の方へ廻してくれる、実に有難い人だと感じる事があるかもしれませんが先ずマア寡い方でしょう。いわゆる娘心の浅果な理想から申しましたら私と同様にあるいは良人を疑がったりあるいは馬鹿らしいと思ったりするような事がないとも限りますまい。私ですらその通りですから娘時代の理想なんぞがあんまり当になるものでありません。世間の娘を持った親やあるいは女子を教育するものはよくそういう事に注意して女の子に生意気な心を出させないようにしなければなりませんね」とこれこそ最も有力なる経験説。
第二百九十六 松茸売
この時門前を「松茸や松茸」と売り歩く声聞えたり。お登和嬢俄に心付き「オーそうだ松茸を買って大原さんに御馳走しましょう。竹や松茸売を呼んで来ておくれ」と下女に命じて松茸を買わしむ。やがて松茸売は下女とともに台所へ来れり。お登和嬢自ら出でて松茸を点検するに小山の妻君も心得のためとてともに出で来り「お登和さん、品が良ければ私も少し買いますがその松茸はどうでございます」