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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
第三百三十一 白い菓子
中川「それは趣味の種類による。今の世中は我が娘に料理の趣味を教える親よりも活花の趣味を教える方が多い。家政や育児の趣味を教えるよりも国文や歌の趣味を教える方が多い。それが僕のいわゆる風流亡国で先ず実用の趣味を覚えてから後に外の事を習わなければならん。君は食卓の上に活花が置いてあったら能くその趣味を解し得るだろうが食物に対しては果してそれ以上の趣味を持っているかね。活花を見てこれは遠州流これは古流と一々鑑別するほどならばこの料理は仏蘭西風この料理は英国風と一々その味を判定するだろうね。活花に天地人の原則がある通り食物には生理上の原則がある。君は活花の原則を知っていて食物の原則を知らないとは言われまい。ネー君今中庭で料理人が白い菓子を拵えている。見給え、円い型へ入れてテンピで焼く所だ。あれを君は御存知か」と食物問題へ引込まれて若紳士は何とも答うる能わず。さりながら外の人もまたその菓子を知るものなし「中川さん、あれは何でございます」と問いかけしは側にいたる老婦人。
第三百三十一 白い菓子
中庭にては料理人が頻に料理の最中なり。スープを煮るものあり、魚の肉を裏漉にするものあり、あるいは菓子を焼くものあり、来会者は多くこの前に聚まりて熱心にその様子を見物する。