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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
第三百三十 心の趣味
食卓へ花を飾るばかりでない。大隈伯爵家の如きは有名なる花壇室内に食卓を設けて西洋人を饗応せられる事がある。西洋人は日本一の御馳走といって悦ぶそうだが冬の寒い日に百花爛たる温室内で天下の珍味を御馳走になったらそれほど愉快な事はあるまい。食卓へ花を飾るのに何の不思議があるね」と穏に答えられて若紳士は暫く口籠りぬ。
第三百三十 心の趣味
さりながらこの若紳士は容易に引込ず「中川君、それではね、食卓を飾るのに西洋風の粗雑な掴み挿しの花を用いずとも我邦には古来より練習した活花の特技があるでないか。遠州流でも古流でも池の坊でもその一流に拠って清楚なる花を食卓へ飾ったら葬式の造花然たるこの掴み挿しに勝る事万々だ。それとも活花は風流に属するから君の主義に合わんかね」と執念く争いて中川を凹まさんとするは子爵家の姫君に対して窃に野心ありと見えたり。他の人々もこの問答を面白く感じぬ。老人連の中には若紳士の説を喜ぶものもあり。中川が如何に答うるやと窃にその様子を伺っている。子爵家の姫君玉江嬢も心配顔に中川の顔を打眺めぬ。中川も少しく考うる所あり「サアそれはチト面倒な問題だ。