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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

冬の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页

青空文庫

第三百五十九 我が覚悟

伝染の極端が華厳の滝へ飛込という事になるからいよいよ困る。そういう有様では無病の人までが段々消化吸収の力を弱くするようなものだ。これは先ず今の病的文学を改良しなければならんが世を文明に進めんと欲すれば誰でも人は平生愉快の心を持っていなければならん。殊に食事の時は愉快の心を以て食物を味わねばならん。これが食物に関して誰にでも応用の出来る心得だ」と再度の説明に席客はいよいよ感服する。若紳士独り苦い顔して「それはなお無理だ」と叫び出したり。

第三百五十九 我が覚悟

若紳士は中川を説破せんとて一生懸命なり「中川君、人の心の愉快と不愉快とはその境遇にあるさ。不愉快の境遇にある人へ心を愉快に持てといっても無理でないか」中川「イヤ、そうでない。人の心の愉快と不愉快とはその境遇よりもむしろその覚悟にある。勿論境遇に幸不幸の区別がないとはいわんが大概な人はその覚悟によって心を愉快に持てると思う。先ず手近い話しが人は誰でも自分の職業を神聖として楽しまねばならん。職業に高下貴賤の別はない。労動力役といえども神聖なる職業だ。天下の人が皆な各々自分の職業を楽しんで熱心に勉強したらば毎日その心も愉快で充たされるだろう。