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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

廊下を通って奥の方へ、如来衛門は導かれた。鬱々たる木立に囲まれた離れ座敷の前まで来ると、

「お言葉通り如来衛門殿を召し連れましてございます」

「如来衛門だけ通りませい」甚五衛門の声である。

「さあさあ中へお入りなされ」若侍は云いすててそのまま後へ引き返した。

如来衛門はすり足をして、座敷の中へ通って行く。

座敷の中央に端然と花村親子が坐っていて、一個の短檠に細々と鯨油の灯がともっている。如来衛門は平伏した。

「遠慮はいらぬ。もそっと近く」

如来衛門はそう云われても席を進めることが出来なかった。

右門が再び声をかけた。「如来衛門殿、お進みなされ」

「は」と初めていざり寄る。

「如来衛門とはその方か。伜が世話になった由、甚五衛門からもお礼申す」

「は」と畳へ額をつけ如来衛門は一礼した。

「さて」と甚五衛門は改まった。「その方を見込んでこの甚五衛門、折入って頼みたいことがある。どうじゃな、きき入れてくれるかな?」

「は」とまたまた頭を下げ畳へ額をすりつけたが、「いかようなお頼みか存じませぬが、私も素は木曽の者、ご執事様のご用とあれば身を粉に砕いてもきっときっと……」

「うむ、働いてくれるというか。