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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

老人と少年とは庵室の縁へ足を投げ出して腰かけたが、

「お三婆はまだ来ぬの」笑いながら老人は呟いた。

「そろそろ来る頃でございましょう。お三婆が降参するかお師匠様が手をつくか、はっきり勝負のつくまでは、いつまででも来ると云いすてて昨日も帰って行きましたから」

「なかなか剛情のお婆での」老人はカラカラと笑ったが、「うっかりすると私の方が手をつくようになるかもしれぬ」

「いえいえそんなこともござりますまいが、見掛けによらずあの婆さん天晴れ術者でございます――こんな山深い田舎に住んでこれという師匠もない筈ですのに、どうしてどこであんな不思議を会得したものでございましょう?」

「山深い田舎におったればこそああいう術者にも成れたのじゃ。山川の霊気自然に凝って英雄豪傑を産むということは、まことに千古の名言じゃ」

「なるほどさようでござりますか――噂をすれば影とやら、お三婆が見えました」

「なに婆が見えたというか」老人は四方を見廻わしたがそれらしい女の姿もない。

「いったいどこへ参ったな?」

「はい、あの向こうの楠の木の蔭に」

しかしそこにも姿はない。

荒鷲に化ける

老人は莞爾と微笑したが、