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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
、どうして復讐が出来ようぞ!」
鳰鳥は思案に余ったように首をうなだれて考え込んだ。
「私の身の上を憐れんで、親身になってこの私を助けてくれるものはあるまいか、そう思って数多い客の中で、これぞと思う侍をあれかこれかと試しては見るが、心の中を打ちあけて頼んで見るようなお方様は今日までは一人も見つからなかった」
彼女は深い吐息をした。
山気にいくらか暈されながらも月はいよいよ冴え返り、月の真下の木曽川の水は一所蛇の鱗のように煌々と銀色に輝いた。
泣くように寂しい女の声で歌を唄うのが聞こえて来た。
「白萩さんが唄うている」鳰鳥は耳を澄ましたが「何という悲しそうな声であろう。ほんとにあの人もお気の毒だ。けれど、あの人の悲しいのは恋しいお方に逢えぬため、私の悲しみに比べてはどこやらに浮気のところがある。親の仇敵を目の前に置いて、手さえつけられぬ不甲斐なさ、草葉の蔭でご両親様がさぞ口惜しがっておいでであろう……それに、私のお兄様、この世に生きておられるやら、それともおなくなりなされたやら、是非ご様子を知りたいと、ここへ集まる諸国の客に、それとなく尋ねては見るけれど、今日が今日までこれという手がかりさえも見つからぬ。