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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

その時、行手の薄の蔭から、それらしい姿が見えて来た。木の葉の着物を身に纏い、あかざの杖を手について、静かに歩む老人姿。

才蔵は思わず呼びかけた。

「お師匠様ではございませぬか」

「おお才蔵か」とその老人は――百地三太夫は微笑を含み、才蔵と並んで歩いて行く。

「伊那家のお館へ毎夜毎夜現われたという物の怪は、どんな物の怪でございましたか?」

才蔵はそっと訊くのであった。

「私が推量していた通り、大盗人の五右衛門じゃ」

「石川五右衛門でございましたか?」

「いかにも石川五右衛門じゃよ」

「五右衛門は何んと致しました?」

「お三婆が吹筒に乗って、五右衛門を助けに飛んで来た」

「それから二人はどうしました?」

「吹筒に乗って飛び去ったまで……」

「どこへ行ったのでございましょう?」

「ここらあたりにいるかもしれぬ」

「え」と才蔵は目を見張った。

「昔、市原野の鬼童丸は、牛の生皮を引き冠り、平井保昌を狙ったとか、今この秋野を見渡せば伊那駒多く放し飼いの、その中に死んでいる二つの駒、疑わしいのはこの黒駒じゃ! 才蔵決して油断すなよ!」

三太夫の言葉の終わらぬうちに、二匹の伏したる黒駒は、がばと毛皮を振り落とし、スックと立った嫗と若武者。