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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

すると、怪しや、その傍らの、畳四枚を敷いたほどの、苔むした岩の地の下から、まだうら若い女の声が、それに答えて云うのであった。

「力柱殿のおっしゃる通り、どうやら今夜も荒模様、寂しいことでございましょう」

するとまたもや力柱の根もとの声が云うのである。

「寂しいのは我慢をするとしても、昨今の不景気はどうでござる。ご同様これではやり切れぬ」

「ほんとにこれではやり切れませぬ。何んとかしなければなりますまい」

「なんとかしようと思っても、こう人間が吝嗇になっては全く仕事がやりにくい、この頃の手合は容易のことでは百文の賽銭も投げんからの」

「そう云ってもあなたの方は、まだホヤホヤの新店だから、お賽銭の額も多かろうが、私の方の守本尊、孕石様のご利益と来たら、ずいぶん昔から云い囃され、試しの尽くされたあげくゆえ、今では一向信者もなく、自然お賽銭も上がらぬ始末に、私一人の生活さえ、むずかしいほどになりました」

「いかさま、お前にそう云われて見れば、私のほんの子供の頃から孕石様のご利益は随分耳に聞いたものさ、古い神様にゃ相違ねえ。ところで本当にその孕石様へ――つまりそこにある苔だらけのその途方もねえ穢い岩へ、子の欲しい女がさわったなら、翌月から子供を孕むというそんな利益があるものかね?」