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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
後夜の鐘の鳴るのが聞こえて来た。鳴り終えた後はまた一層静けさも寂しさも優さるのであった。
「随分寂しいではござらぬか。これでしょぼしょぼ雨でも降ったら化物の出るには持って来いじゃ」
「ほんとに寂しゅうございますね。それに夜も更けたようでございます。そろそろ出るでございましょう」
「あなたは本朝陰陽術の秘伝を極わめた立派の術者、拙者も伊賀流の忍術使い、今夜化けて出るお夏狐こそよい面の皮と申すもの、どのように上手に化けたところで化けおわせることは出来ますまい」
「ほんとにさようでございますね」山尾はこう云って笑ったが、そのまましばらく感慨に沈み、やがて常陸に云うのであった。
「それにしても私や常陸様など縁も由縁もない人達が、花村様から禄を戴き、一緒に仕官致そうなどとは、何んという不思議でございましょう。私にとっては『化物』よりも人間の持っている『運命』の方が恐ろしく思われるのでございますよ」
常陸介も頷いて見せた。
こうして二人は少しの間黙って、暗夜を眺めていた。その時、突然闇の中にほのぼのと青い円光がポツリと一点あらわれたが見ているうちに大きくなり、やがて中から手弱女が忽然として現われた。