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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「はだか武兵衛が来ぬように」

彼ら三人は暗夜の中に各自光を纏いながらへんぽんとして舞い踊るうち、彼らの衣裳は悉く落ちて、ただ見る三匹の仔牛ほどの野狐が、後脚二本で土に立ち、前脚二本で拍子を取り、三叉に裂けた太い尾を肩に高々と背負ったまま奇怪の舞踏をやっている。

その物凄い光景にはさすがの山尾も常陸介も体の縮むを覚えたのである。

やがて彼らは踊りにも疲労れ夜も明け方に近寄ったからか、散り散りに別れて消え失せた。

後は寂然と静かである。

東の空が明るくなって横雲へ東雲の色が付き寒い朝風が吹き出した。

常陸と山尾は立ち上がって西小寺の境内を後にした。

二人の顔には愁いの情がハッキリと現われているのであった。

常陸介は伊賀流の忍術者、山尾は陰陽名誉の女流、二人ながら達人であるだけに、野狐の祟りというようなものが案外恐ろしいということを充分知っているために、彼ら三匹の唄った言葉が気味悪く思われてならないのであった。

「城下に疫病が出来ようぞ」「死人で丘をつくろうぞ」こう唄った彼らの唄の言葉が心にかかってならないのであった。

それで二人は物も云わず、お城へ行く路を歩むのであった。