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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「普通の勇士とはまた違って、ああいう不思議の徳を備えた、あのような偉人を幕下に持って武勇をお振るい遊ばすからには、花村様のご武運は上々吉と申すものじゃ」
「噂をすればそれ影じゃ。侍衆に囲まれてはだか武兵衛様がお通りなさる」
そう云って指差す方角から、褌一筋の裸体一貫、隆々たる筋肉を寒風に晒した噂の主のはだか武兵衛が、城中の侍に前後を守られ悠々として歩いて来る。
「ところで今日はどの方面を診て廻わることに致そうの?」
侍の一人を振り返ってはだか武兵衛はこう訊いた。
「白山町の方面に十人ほど患者がございまして、先生のお出張を待ちおる次第。もはや患者と申しましてはその十人だけでございます」
「それでは今日はその十人を一人も残さず癒すとしようか」
「なにとぞさよう遊ばしまして」
「それではボツボツ参ろうかの」
「はっ」と侍は辞儀をする。そして武兵衛の後に従いていとも恭しく歩むのであった。
こうして彼らの一行は白山町までやって来た。そして武兵衛は患者の家へ侍の案内で立ち寄った。
こうして最後の患者の家へ彼らの一行がはいった時にはその日も暮れて夜となった。そして武兵衛が同じ手段でその家の病人を癒した時西小寺の方角で悲しそうに鳴く狐の声が聞こえて来た。