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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「その先生の覚し召しも私には解っておりました」市之丞は慎ましく云うのであった。「それ故私は機会につけては父にも申すのでございます。――無名の戦はお止めくだされ。せめては脇屋刑部様との理由ない日頃の確執ばかりはどうぞお止まりくださるようにと」
「そうしてそれは市之丞様のお父上ばかりではござりませぬ」悲しそうな声を絞りながら芳江姫も云うのであった。「私の父も同じ事。どうぞ船津の神保様とだけはお睦じく遊ばしてくださるようにとお頼みしても取り合わず、女の知ったことではないとおっしゃられるばかりでござります」
「時節が参らねば浮世の事はすべて思うようにはならぬものじゃ。万事気永うなさるがよい。なるほど父上を諫められることも折につけてはなさるもよい。とは云えそれよりも大事のことはいかなる障害が来ようとも決して消えも減りもせぬ劇しい情愛を持たれる事じゃ。そういう劇しい愛情は神様もお助け遊ばすであろう。神の冥護を頭に戴き愛の焔を胸に貯え驀地らに前へ進まれるがよい。梶は老人がとり申そう。そうしてお二人のその愛情の確固不抜じゃということがお父上達に感ぜられた時、自と両国の和睦もなり平和が参るに相違ござらぬ。