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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

陽の光地上に射す限りは人間の生きられる道はござる」

「嬉しゅう存じます市之丞様。この不束な私のためにそれほどまでのご決心。何んとお礼を申してよいやら、あなたとご一緒に参るなら鬼の住む窟であろうとも奈落の底であろうとも決して厭いは致しませぬ」

興奮った恋情にひしと抱き合った。

その時、桜の大木の乱れた花の間からつと若者が現われたが、底の抜けたような力のない、それでいていかにも憤怒に顫えたどこか愚かしい言葉付きで、

「芳江様! 粂太の前で、ようそんな真似しくさりますの!」

こう一声極め付けた。

二人ははッと驚いて右左へ体を開いたが、芳江はにわかに笑い出した。

「おお、お前は組頭の、あの藤作の伜の粂太。何か用でもござってか?」

「これ芳江様、いえお姫様、用でもあってかとは聞こえませぬ。よう心に問うて見なされ」

尚も粂太は愚かしくしかしいかにも執念深く芳江に向かって云うのであった。

「もうお前様のお心には俺が事などござりますまいが、俺が心にはお前様の事がいまだに鮮明り残っています……忘れもしない十年前の、しかも初夏の真昼頃じゃ、お前様と俺とはこの木蔭で……」

「え?」