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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
他ならぬそれは紋十郎で、彼は上座に胡座を掻き、さっきからいかにも不機嫌そうに、ジロジロ座中を睨め廻わしていたが、とうとうこの時怒鳴り出したのであった。
「何が面白くてはしゃぐのじゃい! 俺はちっとも面白うないわい! どいつもこいつもヤクザの奴ばらじゃ。俺の不機嫌が解らぬのか! ……全体島君はどこへうせたのじゃ」
「おおそうそう島君さんは、どこへいつの間に消えたのであろうぞ」
千寿というのが合槌を打って、それとなく花桐の顔を見た。しかし花桐は顔をそむけ何んともそれには答えなかった。
「声を揃えて呼んで見ましょうぞ。どこぞで返辞をなさろうも知れぬ」
こんなとぼけたことを云い出したのは、剽軽者の亀菊である。
「おお、おおそれもようござんしょう。さあ呼びましょうぞ、呼びましょうぞ」
千寿はここでも合槌を打ち、声を揃えて呼び立てた。
もちろんどこからも返辞がない。
「阿呆らしい事おいてくれ!」紋十郎は益※(二の字点、1-2-22)機嫌悪く、「えい、誰か早く出て行って、館中、隈なく探がすがよい」
「それでは妾が……」と、花桐が、スラリと立って出て行った。もうその後は座中一体白け渡って言葉もない。