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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「してどこにあると云うた?」

「おおそれも聞きました。人に見付かり奪い取られては、虻蜂取らずに成ると云うて、思いも及ばぬ巧みな場所に隠してあるのでございます」――「うむ。そうしてその場所は?」

「硫黄ヶ滝の大絶壁に一筋深く穿っている、雉子ヶ洞という洞穴の奥の、畳み上げた大石の下に」

「そこに確かにあると云ったか?」――「ハイ、確かにあると云って、鼻うごめかしておりました」

「おお忝い、よくそれまで、深くも探ってくれたよの! お礼は海山後で云う! 今はちょっとの時刻も大事。葡萄大谷まではここから二里、硫黄ヶ滝までは尚遠い! しかも険しい山道ながら、韋駄天走りに駈けつけて、今宵の中に手に入れねば、どのような邪魔がはいろうも知れぬ! 島君さらばじゃ!」

と云う声もろとも、裾を捲って駈け出した。

「おお、もうそれでは行かんすか」

こう島君が云った時には、右衛門の姿は闇に隠れ、跫音ばかりが聞こえていたが、その跫音もやがて消えた。

「どうぞお怪我をせぬように」

こう口に出して念ずるばかり、茫然佇んだ彼女の肩をハタと叩いたものがある。振り返って見れば思いもよらぬ紋十郎が立っている。