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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「死んでくだされ死んでくだされ!」

とお吉は鎌を差しつけ差しつけ狂気のように叫ぶのであった。

「死にたければ汝死ぬるがよいわ!」

初めて本性をあらわしてこう紋十郎は一喝した。

「葡萄大谷がそれほどよくば葡萄大谷の土になれ! これお吉この兄はな、いかにもお前の云う通り神保方に頼まれて、弾正太夫に弓引く者じゃ! この乱れた戦国の世にそれが何んの悪かろう。良鳥は名木に巣食い佳士は名士に頼る。弾正太夫というたところでたかが我々賤民の長じゃ。それに比べては神保様は足利将軍より許されて飛騨を領する国司大名じゃ。自ら身分に高下がある。そうして俺はもうつくづくここにいるのが厭になったのじゃ。獣や不具者を引き連れて旅から旅を巡って歩く面白くもない見世物商売。そうして部落へ帰って来れば何彼と詰まらない用事ばかり。幾十年これから生き延びたところで生涯賤民で終らねばならぬ。――ところで船津の神保様へ従えばすぐに立派な武士になれ、その上知行もくだされる筈。連れてお前も武士の妹と多くの人に尊敬され、肩身広く浮世を暮らすことが出来る。何んと素晴らしい出世ではないか! 妹は兄に従うものじゃ! さあもう何んにも云わぬがよい!」