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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「そう云えばそうじゃその通りじゃ! すべてお殿様のご乱行の、基はと云えば鳰鳥からじゃ、何んでも鳰鳥めがお側から、ああしろこうしろとお殿様を指図するとかいうことじゃ。その鳰鳥めの指図のままに、お殿様はお動きなさるそうじゃ! 憎いのは鳰鳥という女じゃ!」
「それに鳰鳥というあの女子は、魔法とやら妖術とやら怪しい術を時々使うということじゃ。恐ろしい女子はあの鳰鳥じゃ」
「恐ろしいと云おうか憎いと云おうか、ほんとにほんとに鳰鳥めに思い知らせてやりたいものじゃ!」
――女どもは口々に喚きながら、神に願いでも掛けるように額を畳へ押しあてた。
奥深い大奥の室々はやがてひとしきり静まった。
突然、その時裏庭に向いた、障子一杯に蒼白い、燐の火が燃え立つと思う間もなく、巨きな女の頭の影が、髪をおどろに振り乱し、最初に一つやがて二つ、それから三つ映って見えた。
女達は声さえ揚げ得なかった。一度に颯と飛びあがり、そのままあたかも木の葉のように、室から廊下へ走り出て、一散に奥の方へ逃げ込んだ。
と、すぐ燐の火が消えた。消えるや否やその障子が、一枚するすると開きかけた。一杯に開いた障子の蔭から音もなく現われた妖怪は、あたりを窃かに見廻わしてから座敷の中へはいって来た。