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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
老師は急に指を引っ込ませて白髯の生えた神々しい顔を静かに彼の前へ差し出した。
それから厳かにこう云った。
「この顔が見えるかな。これは人間の顔ではない、勿体なくも天帝の顔じゃ」
「尊い尊い天帝様、私をお護りくださいますよう」――こう云うと太郎は合掌した。眼尻には涙さえ湿んでいる。
「これ太郎!」
とオースチン師は物々しい口調で云いかけたがにわかに可笑しくなったかして数馬の方を振り返り、
「数馬殿滑稽ではござらぬかな。眠りの術に掛かっている間はこちらの意志が先方へ通じ、先方の意志を自由自在に制御することが出来るのでござるからの」
東条数馬はもうさっきからオースチン老師の放れ業に胆を潰していたのであったが、こう云われてさらに感に堪えたように、
「誠に誠に稀代の術、妖術の一種でござりまするかな?」
「いやいや決して妖術ではござらぬ。いわば一種の学術でござってきわめて合理的の正法でござるよ。まずそこでゆっくりご覧うじろ。段々面白くなり申す」オースチン師はひょいとそこで白虎太郎の方へ向きを変えたが、「これ太郎承われ。天帝の神のご神託であるぞよ。ええと、それから何んと云おうかな?」