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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

オースチン師は指揮を下したが誰も休もうという者はない。さっきの恐ろしい出来事が人々の神経を焦立たせているのだ。

殊に、芳江姫に至っては、ほとんど人心地がなさそうであった。顔の色を蒼白にし全身をワナワナ顫わせている。数馬とそして市之丞とは血気の若武士であるだけに外見は平然としているものの、内心不安に思っているらしい。

オースチン師その人さえ実は不安に思っているのであった。首を落とされた人間が、自ら歩いて窓を破り夜空へ舞い上がったということはどうにも不思議でならなかった。磔刑に懸けられたキリストが昇天したという事はある。しかしそれはイエス・キリストが、神の愛児であったからそういう奇蹟も出来たのである。ところで武者所鬼王丸は神の子どころか悪人である。それが同じような奇蹟を行うとはどう考えても奇怪である。――

夜は次第に更けて行く。

人々は自然に眠くなった。で、各自の衾にはいり静かな睡眠に入ろうとした。

芳江姫はどうにも眠られなかった。で、時々眼を開けて四辺をそっと見廻わしたりした。その中次第に眠気が差しどうやら、うとうとと眠ったらしい。

「あっ、冷たい!」