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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「さようさ。そろそろ引き上げるかな。信州の庵を立ち出でてから美濃恵那山にしばらくいただけ後はずっとここにばかりいるので一向どうも気が変わらぬ」

「お引っ越しなさりませなさりませ」

「と云ってすぐに越しもなるまい」

「それはまた何故でござります?」不思議そうに才蔵は訊いた。

「宝物を守っている身だからよ」

「ああ、さようでございましたな」

「……『姿隠しの袋笠』と『鳥音聞こえの木笛』とは、王朝時代から有名な物じゃ。容易に捨ててゆくことは出来ぬ」

「誰がいったいこんな窟へそのような大切な宝物を隠して置いたのでございましょう?」

「王朝時代の大盗賊、袴垂保輔だ」

「へえさようでございますか。……ところで二品のその宝物にはどのような功徳がございますので?」

「『姿隠しの袋笠』を冠れば忽然肉身を消すことが出来る。『鳥音聞こえの木笛』を吹けば無数の小鳥が集まって来て様々の事を話してくれる。小鳥の言葉がわかるのじゃ。や! 誰かやってくるようじゃ。人間の近付く気配がする。しかもどうやら二人らしい」

「それは珍らしゅうございますな。ここら辺りには人間などは一人もおるまいと存じましたのに。