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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「これはこれは思いもよらぬ、お心に掛けられたるくだされ物、有難く頂戴仕ります」

その時莞爾に笑いながら、副使格の乙女が膝を進めたが、

「我が身は木曽家奥向きに仕える、中老松風と申すもの、義明君の奥方様より、あなたへと申してくだされた物、いざお受け納めくだされますよう」

云いながら後の五つの行李を、前へ押すように会釈をしたが、ものの云い振り艶かしく、笑った顔に千両の媚あり、洗い上げた美しさ、身惚れてポッとしない奴は、白痴か木石か? それにも拘わらず地丸左陣は、ニコリともせずただ真面目に、

「なになに木曽殿奥方様より、この私へくだされものとな、これはこれはご丁寧に、何んとお礼を申してよいやら。遠慮なく頂戴仕りまする」恭しく一礼をしたばかりである。

「いやナニ地丸左陣殿、松風は某の妹でござるよ」落合内記は笑いながら云う。

「おおおおさようでござったか。ご兄妹にて使者のお役目、ご苦労千万に存じます」

云いながらポンポンと手を拍った。隣り部屋から返辞があって、すぐに襖がスーと開き、手下が一人顔を出した。

「長の道中、お使者にはさぞお疲労れにござりましょう。別館にてゆるゆるお休みくだされ……これよ運八、粗忽なきよう、お二人様をご案内致せ」