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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「言葉を換えると安心立命」
「安心立命? ……それは夢だ」
「さよう、意志の弱い者には」
「ははあ、またそこへ来ましたかな」常氏はまたも笑ったが、「国土あっての安心でござる、財宝あっての立命でござる。国土財宝を捨てたなら乞食をせずばなりますまい」
「では乞食はお厭かな?」
「云うまでもない、大嫌いでござる」
「貧乏楽、貧乏楽、この境地が解らないと見える」
「自分一人が貧乏になり、何んでこの世が楽しかろう。世間では耳さえ貸しますまい」
「当分はそうかも知れませぬな」
「当分ではない永久でござろう」
「たとえ永久そうであろうと、拙者の遊説に変わりはござらぬ」
「失敗を見越しての遊説かな」
「事の成敗利鈍によって真理は累されませぬ」
「不可能の事は不可能の事じゃ」
「さよう、意志の弱いものにはな」
「またまたそこへおいでかな。まずそれはよいとして、兵は兇器と云いながら、四百人の兵を引率して横行致すは何んのためでござるかな?」
「いやこれは兵ではござらぬ。心ならずも自由を奪われた、世にも可哀そうな人夫達でござる。それを拙者が救い出し、ここまで同道したのでござる」
「今後はどうなさるお意りかな」