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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
でその日から八方へ踊り子集めの令が飛んだ。
季節から云えば晩秋で盆踊りを踊るには寒すぎたが、木曽家大奥の催しというので、木曽谷三十里の処々方々から無数の踊り子が集まって来た。
踊り場は城内の馬場で、当夜は四方へ大篝を焚き、一面暖気を漲らせ、他面踊りを照らすことにした。変装勝手というところから、城内の者はいうまでもなく、宵から続々詰めかけて来た城外数百の踊り子達は各自好みの仮装をし、それを互いに誇り合った。
やがて一番の太鼓が鳴り、いよいよ盆踊りが始められた。今に伝わる木曽踊り、歌の文句もその節もまことに単純なものであるが踊りの振りに至っては分けても単純なものである。「ヨイヨイヨイ」という掛け声にもポンポンポンと手を拍つ音にも、原始的の気分が漲っている。
人数はすべて一千人、三分の一は女であった。それが巨大な円形を作り、グルグル廻わりながら踊るのであった。
馬場の東の桟敷には、木曽義明が控えていた。淫蕩乱酔幾年月、それが肉を食み骨を削り、今日のいわゆる神経衰弱、手足は顫え耳は鳴り、唇痙攣して言語不明、視力弱り頭髪白らみ、見るも無残に憔悴していたが、尚その眼では美女を追い、尚その鼻では肉の香を求め、踊り子を一人一人漁っていた。