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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
そしてその御像を讃えるための百人あまりの衆僧が、朱色の法衣を纏った姿で讃美の歌を唄っている。その衆僧の真っ先には、紫の法衣を身につけた際立って尊い一人の僧が香炉に香を投げている。
それが一座の司僧らしかった。
と、不意に紫衣のその司僧が、鳰鳥の方へ振り返った。そして優しく笑いかけた。優しい司僧の笑顔を見ると鳰鳥は思わず叫んだのである。
「尊い尊いお司僧様!」と。
すると司僧はまた笑って、
「私はお前のお父様じゃ!」
「私のお父様でございますって?」
「そうじゃお前のお父様じゃ。そしてお前はこの私をこれまでも度々見た筈じゃ」
「見たような気持ちも致します」
「お前は度々この世から息を引き取った事があろう?」
「これまで度々ございました」
「そしてお前は死んでいながら、一人の坊様を見た筈じゃ。その坊様がこの私じゃ」
「そう云えば大変似ておられます……それにしてもお父様、いったいここは、何んという所でございます?」
「ここは日本の土地ではない。元お父様の住んでいた西班牙という国なのじゃ。その西班牙の会堂なのじゃ。お前のお父様のこの私は、日本に渡らぬその前はこの会堂の長であった。