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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
もっともそういう天才なればこそ、木食仙人が見込んだものであろう。
彼女はそこで決心した。
「人家へ出てもつまらない。女の泣き声を追ってみよう。ほんとに悲しそうな泣き声だ。困っているに違いない。行って助けてやることにしよう」
東南を指して歩くことにした。
非常に険しい道ではあったが、それでもズンズン歩いて行った。やがてその道もなくなってしまった。しかしやっぱり歩いて行った。
しかし彼女の遠耳秘法には、一つ未熟な点があった。
女の泣き声がきわめて手近に――数町先のように聞こえたが、それでいて二里三里と歩いて行っても、近付くことが出来なかった。
五里あまりも歩いたであろうか、忽然深い谷へ出た。
そこに女が二人いた。若い美しい娘であったが、泣きながら岩山を指していた。
「どうなさいまして? 可哀そうに」
近寄って鳰鳥は優しく訊いた。
二人の乙女は驚いたように、しばらく鳰鳥を見詰めていたが、「妾達は盗まれたのでございますの」一人の乙女がこう云った。
「おやおやそうして何を盗まれて?」鳰鳥は立ち入って訊いて見た。彼女には泣いている二人の乙女が妙に気に入ってならなかった。