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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

の市街なるものは、まことに立派なものであり、家々はほとんど石造であった。それがいずれも三層四層の、大厦であり高楼であった。

市街の中央に本城があったが、これぞこの国の領主の住居で、領主夫婦と家来とが、贅を尽くして住んでいた。この本城を中心とし、八方へ大道が通じていたが、こういう市街の建て方も、バビロンの風と似通っていた。

街の辻々には石像が立ち、小さな公園が出来ていた。今は初冬で花はなかったが、春からかけて秋の初めまでは、花の絶え間がなかった。本城の背後には神殿があり、ご神体は「根本の神」と呼ばれていた。そこには数十人の巫女がいた。

淫祠を祭るという事は、未開時代の特色であって、物質文明科学文明の、隆盛を極わめている現代にあっても、その根を断つことは出来なかった。信濃の笠石、男石、日向小林在の陰陽石、上野須原の凹凸神、富士山麓の夫婦岩、岩瀬の陽石などそれである。

由来人間の慾望は、性慾と生存慾との二大慾望に、帰納することが出来るのであって、この慾望の起伏消長が、人生でもあれば社会でもあった。そうして二つの慾望が、不幸にして充たされないその場合に、芸術、宗教、科学などが、人の世に招来されるのであった。