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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

けれどもお前も知っている通りあの如来衛門の悪漢めは、私にとっては商売の敵じゃ! 何故かというにあの男は、自分が男を売りたさに、達者だなどと云われたさに、この私の商売を悪様に世間に向かって云い触らしおる――女の操を売り物にして金ばかり儲けたがる藪原長者は、人間ではない畜生だとか、ああして金は儲けても、やがて悪銭身に着かず、そのうちに貧乏になるだろうとか、わけても小癪にさわるのは、私の財産の女どもをうまうま口車に乗せおって、こっそり館から抜け出させ、他国へ逃がしてやることじゃ。この私がもしも畜生なら彼奴は泥棒というものじゃ! 泥棒と云えばあの野郎め、俺に堰かれたその夜から裏手の石垣を掻き登り、お前の室へ窃りと忍んで行くということだが、これこそ泥棒の所業であろう……なんと白萩、お前の情夫は、そういう泥棒野郎なのじゃ! だによって捨てろと訓すのじゃ! 今夜こそ口先のあいあいではこの長者様は承知せぬぞ! 性根を据えて返辞をせい!」

こう云われても白萩は、今にも折れそうな細い頸をじっと首垂れているばかりで、返辞しようとはしなかった。

藪原長者の赤黒い顔は次第に一層赤くなった。