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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

彼らは松明を持っていた。その光が赤々と輝き、そうして闇の夜を昼のように照した。

彼らはひどくお喋舌りであって、どうも一向厳粛でなかった。全く礼節にかかわらなかった。「お前」だの「俺ら」だの「汝」だの「俺」だのと、こういう言葉を平気で使った。だがそのためかえって彼らは、人間らしく見えるのである。

荒玉梟帥にもそういう様子が、ひどく気に入って嬉しいと見え、自分も同じように喋舌るのであった。もちろんその言葉もぞんざいであった。その代り非常に親しみがあり、主君と家来というよりも、仲間同志といった方がよかった。

「おお兄弟、酒を振る舞うぜ。ヤケに飲んでくれ! 目茶苦茶にな!」

すると家来達は大はしゃぎで、

「ワーッ、話せらア、うちの親玉は!」

などと有頂天に囃すのであった。

「おおおお、野郎ども羨むなよ! 途方もねえ別嬪を貰うのだが、そいつあ好色で貰うのじゃねえ。別の考えで貰うのだからな」

「ワーッ、話せらあ、家の親玉は!」

断崖には喬木灌木が、地を蔽うて生えていた。その上に雪が積もっていた。

見えつ隠れつ松明の火は、その間を潜って行く。

やがて断崖を上り切った。