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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
声はどこから来たのだろう?
正面に小高く岩を積み上げ、その上へ大熊の皮を敷き、一人の老人が坐っていた。その老人が怒鳴ったのであった。
老人の名は土彦と云った。岩石人の長であった。白髪が肩まで垂れていた。彼の右腕は千切れていた。身長だけは普通に高かった。
左手に玉を握っていた。それは勾玉管玉であった。囲炉裡の猛火がそれに反射し、ピカピカ獣の眼のように光った。
どうしたものかこの時にわかに、岩石人達は動揺した。
米主が姿を現わしたからであった。
米主はツカツカと前へ進んだ。
「俺は麒麟山の麗人族、兵糧長の米主だ! 無礼をすると承知しないぞ!」
グッと四方を睨み廻わした。その眼を土彦の顔へ注いだ。
「これ、貴様がここの長か※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
土彦の顔色は見る見る変わった。怒りと恐怖と当惑とが、入り雑ったような顔色であった。
「うん」と彼はまず云った。「岩石人の酋長だ! 俺の名は土彦だ。何んの用があってやって来た」
「これ馬鹿者め、そこから下りろ!」
米主は烈しく威嚇した。「俺と貴様とは身分が違う。俺の祖先は天孫だ。貴様の先祖は土蜘蛛ではないか!」