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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

山吹殿のお心のうち、さこそと推量いたされて、人事ならず胸苦しく眼には涙も浮かんでござる。しかしどのように嘆かれたとて死者が生き返る例は聞かず、かえって自身を傷つけるばかり、お諦めなされと申すより他に言葉もござりませぬ。云うまでもなく吾々はもはや断じて山吹殿を折檻致して木曽家の様子を聞こうなどとは致しませぬ。のみならずあなたの進退は、今後とも全然自由でござる。この陣中にとどまって、吾らと起居をなさるとも、または木曽家へ行かれるともお心まかせでござります。しかし、一旦このように、吾らが捕虜となられたからには、たとえ木曽家に帰られたとて、おおかたの人には軽蔑され、もしくは間者と疑われて、昔のように心安く日を暮らすことは出来ますまい。それよりいっそここに停まられて変わった吾らの生活振りをご覧なさるも一興でござろう。そのうち合戦も止めになり双方和睦ともなったる際には、吾ら必ずそなたを連れて、木曽へ参るでござろうほどに……」

慈愛のこもった御嶽冠者の諄々と訓す言葉に連れて、怒りと悲しみにいら立っていた山吹の心も静まったか言葉もなくて俯向いていた。

おりから、第一の木戸の辺から、吹き立てる法螺貝の音と共にワッと揚がった鬨の声、木曽方が夜討ちをかけたと見える。