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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「それには仔細がございます。私は木曽家の家臣ながら故あって父に勘当され、女房と連れ立ち木曽を立ち退き、諸国を経巡っておりましたところ、今度お館の大事と知り、夜を日に次いで立ち帰る途中、ここらあたりまで来ました時、野武士の群に取り巻かれ、女房の行方はいまだに知れず、私はごらんの有様となり、無念の月日を送っておる次第……」
「どのように無念でござろうとも、病いには勇士も勝てませぬ。廃屋さえお厭いなさらぬならば私の家でこれからも気長に保養なさりませ。それはとにかくあなたのような立派なお方が何の科で、ご勘当など受けなされたか、差し支えなければお序にそれもお話しくださいますよう」
「何んの差し支えなどござりますものか。それではお話し致しましょう。一口に申せば吾らが主君、木曽のお館義明公を、淫酒をもって騙かす鳰鳥と申す殿の側女を殿のもとから遠避けようと、血気に任せてご酒宴席へ乱入致そうといたしたため、父の勘気を受けましたまで、他に仔細はございませぬ」
右門はいかにもしんみりと、その頃の事を思い出し、涙ぐみながら云うのであった。
婦は静かに打ち頷き、
「さような訳でございますなら、侍冥利に適いました立派な行いではございませぬか。