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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
「無礼者!」
と珍阿弥が怒鳴り、
「失礼、ご免、お許しくだされい!」
と、ご大老が謝った。
逆上している証拠である。
火の蟒!
そっくりそうだ!
のの字を描き、しの字を描いて、風に捩れ束になった焔が、蟒のように※(「虫+廷」、第4水準2-87-52)って来る。
こういう修羅場を突破して、冬次郎と熊太郎と範之丞と織江とが、一つに塊まって走っていた。
花四天十数人に周囲を囲ませ、十二神貝十郎と伴作と源吾と、そうして九十郎とに護衛され、意次がここの境地から、構外へ遁がれ出ようとして、走って行く姿が遙か向こうの築山の裾の辺に見えたからであった。
「上様は?」
と貝十郎はいった。
他の連中はほとんど誰もが、将軍家のことなど忘れていた。
「上様は※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
と貝十郎はいった。
その貝十郎は公卿姿ではなく、伴作などと同じ姿であった。
今はほとんど珊瑚の楼といおうか、火になっている阿蘭陀風の屋敷の、すぐの近くに煙りに巻かれ、派手やかな女を横抱きにした、尉姿の男が起きつ倒れつ、走りもならず喘いでいるのが見えた。
「上様とお浦だ! 上様とお浦だ! ……白須氏、桐島氏!」