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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

「朝風呂、丹前、長火鉢、そんなご大相な身分でもないのに、昼から酒とは豪気だねえ」

と、腹立たしそうな声でいった。

「戻る早々お小言か」

なるほど酔っている九十郎であった。

九十郎は酔った巻舌で、少オし廻らぬ口説でいった。

「自棄が手伝っての昼の酒さ、まあそうガミガミいわねえものだ」

編笠を脱いで抛り出し、両刀を取って脇へ置くと、火鉢を中にお吉と向かい合い、

「どうだ今日の商売は?」

「江戸者らしい二人の野郎が、昼中女が欲しそうに、露路をキョロキョロあさっていたから、引っ張り込んで奥へ寝かし、お金とお由とをあてがったところ、厭だの違うのと吐かすじゃアないか……」

「そこでお前が出たってわけか」

「おふざけでないよ、何をいうんだよ、……もっとも妾が出たことは出たがタンカを切って嚇しつけて、取るだけのものを取ったまでさ」

「だんだん技量が上がることのウ……頼もしいお神さんを持っているので、浪人になっても干乾しにもならず、俺アくらせるというものさ」

四

逃げ水屋敷の大乱闘、それが浪人する原因であった。

「警衛の任にあたっていた汝が、この手落ちは何事か!」

主殿頭は激怒した。