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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

で意見を述べておる。が、こいつも理想論じゃ。……学者の名論卓説というやつ、実行出来ない理想論と、おおよそ相場がきまっているよ。……ところで一層恐ろしいは、浪人ではなくて金貸しじゃぞ! そうは思わぬかな、貝十郎」

「金貸し? 金貸しと仰せられますると?」

「金を融通する金持ちどもよ。幕府直属の金貸しといえば、御為替方御用達じゃ。旗本に属する金貸しといえば、村田春海や大口屋暁翁、いわゆる蔵前の札差しじゃ。各藩に属する金貸しといえば、掛屋と称するあの手合いじゃ。もちろんお前などはよく知っていようが」

この時襖の向こうから、

「申し上げます」

という声が聞こえた。

「何じゃ? よい、襖をあけろ」

「牧野遠江守様よりお使者のお方が、参上いたしましてござります」

「後刻逢う。待たして置け。……なぜ彼奴らが恐ろしいかというに、武士の内臓を食い荒すからじゃ」

「殿、お使者にお逢い遊ばせ」

「まあよい、それよりお前と話そう」

意次は珍しく熱を持っていった。

六

なお語ろうとする意次を制し、貝十郎は部屋を出た。

「お使者お通しなさるがよい」

一間をへだてて控えていた、小侍へそういって、貝十郎は裏庭へ出た。