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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
と、不意に行手の林から、提灯の灯が二点ほど現われ、人声とともに近寄って来た。
同じく浪人と百姓どもとの、武器をたずさえての一団で、先刻の一団の別働隊らしく、無頼の態度を見せていた。
「待たれい!」
「どこからどこへ行かれる?」
「ふふん、女を連れているの」
「我らは佐久より参ったもの、百姓一揆指揮するものじゃ」
「応分のご寄附願いたいな」
「お顔拝見」
「まず女から」
一人の浪人が近寄って、織江の菅笠を取ろうとした。
「待て! ……さわるな! ……その婦人へさわるな! ……さわらばそこから切れて飛ぶぞ!」
抑えた、陰々とした、含み声で――十分の自信と相手を侮蔑し、無視した覇気とをこめた声で、そう九十郎は無造作にいった。
が、いいながら九十郎は、その仲間から数間離れ、それらを尾行けて来たかのように、忍び足して歩いて来、その時側の木立の蔭へ、身を隠して腕組みをし、こっちを見ている大髻の武士へチラリと視線を投げやった。
五
(あの武士だけが武士らしい。他の輩は、他の輩は!)
そう思ったからであった。
「さわらばそこから切れて飛ぶと! 何をほざく! ご大相もない! さあどうだ、足が切れて飛ぶか!」