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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
提灯の火に道を照らし、家々の門をぼんやりと明るめ、駕籠は先へ進んで行った。
神田の方へ行くのである。
右の方へ曲がったとたん、またも五人ほどの覆面の武士が、酔っているような足どりをして、よろめくように寄って来たが、駕籠脇の熊太郎の姿を見ると、ギョッとしたように一斉に反れた。
そうして行き過ぎた駕籠を見たが、
「大変な奴がついているな」
「神楽坂の先生と来た」
「鬼戸ヶ崎か、こいつ敵わぬ」
かたまって、佇んで囁き合った。
駕籠は先へ進んで行く。
行く手に辻のあるのを見て、熊太郎は駕籠を止めさせた。
それから辻まで小走って行き、右と左へ眼を配った。
闇ではあったが辻の左右に、相当多数の人間が、蠢いているのが感ぜられた。
駕籠の側へ帰って来た熊太郎は、駕籠の中の織江へいった。
「織江殿、どうやら田沼の手の者が駕籠につきましたようにござりますぞ」
「はい」
と織江は駕籠の中で、帰る時特に冬次郎から、手渡された長目の懐刀の柄を、砕かんばかりに握りしめたが、
「いずれそうあろうと存じました。……」
おちついた声でそういった。
「妾、覚悟をいたしおります」
「おい外伝。……これ新助。