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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
駕籠は進み、人も進んだ。
「清三郎」
と熊太郎はいった。
「そちは駕籠から離れてはならぬ。いかなる場合にも駕籠脇におれ。……危険迫らば大声をあげよ」
「かしこまりましてございます」
駕籠は進み、人も進んだ。
俄然小広い一廓へ出た。
数閃!
白刃!
闇ながら光った!
殺到して来た! 十数人!
「駕籠下ろせ! 塀に付けよ! ……離れてはならぬぞ! 汝らは守れ!」
こういった時には熊太郎、相手を迎えて自身一躍、すでに敵中に切り込んでいた。
「わッ」
「わ、わ、わ、わーッ」
と犬のような悲鳴!
倒れる者! 姿! 地響き!
空に輪を描く剣! 剣! 剣!
プーッと血煙り! 暗中ながら立って、生臭さ! 生臭さ!
ダ、ダ、ダ、ダ、ダーッ!
逃げる音!
見よ、すでに、戸ヶ崎熊太郎、飛び返って駕籠脇に立っていた。
地に蠢きノタウチ廻り、唸り、呻く、声! 声! 声!
が、シーンだ! 一時に寂然! 遙かに逃げのびた敵の姿、見えなくなって寂然となった。
いつか提灯も掻き消えて、黒一色の闇となった。
短くはあったが長く長く、感じられる時間が経って行く。
と、――
ジリジリと後方から……