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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
後らの背後には丘の脈が、土坡のように延びていた。その背後に車塚の郷があるのであった。
貝十郎は手をかざして眺めた。
本陣でもあろう少し離れて、幔幕を張り焚火をし、抜き身の槍を幾本か立てた、一団が静まって屯ろしていたが、槍の先に三個の生首を貫き、それを示威的に川の畔に立て、幾人かの浪人らしい武士たちが、その側に引き添っているのが見えた。
貝十郎は下流を眺めた。
橋が一筋かかっていた。
(あれを渡って背後へ出、本陣の様子をよく見てやろう)
で、源吾と伴作とを連れて、橋のある方へ貝十郎は歩き、その後を外伝がしのびやかに尾行けた。
と、この頃小諸城下の、雑踏の巷を分けながら、冬次郎と熊太郎と清三郎とが、勘助や新助を先頭に立て、車塚の方へ走っていた。
「殿様ア、こっちだ、こっちの道でえ、ちゃアんとみちしるべの符牒がありやす!」
「今度はこっちだ、こっちの道でえ、ちゃアんとみちしるべの符牒がありやす!」
で、どんどん走って行った。
田沼一行の後をつけ、冬次郎たちの一団が、この城下へやって来たのは、半月ほどの以前のことであった。最も繁華の角町の、商家の奥の離れを借りて、そこで一同住居して、すきを見て意次や貝十郎を討ち、お浦を捕えようと心掛けた。