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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

「九十郎の在所知っておろうもしれぬ! 逢って訊こう! 織江一緒に!」

「あい」というと片時も放さぬ、懐刀とり上げ帯に※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ。

「行こう!」

「あい」

戸外へ出た。

夜が更けるに従って、市中は騒動の兆を呈した。

と三人の人間が――外伝と新助と女勘助とであったが、三方に分かれて煽動していた。

小舟町の露路では女勘助が、例の濃艶の町娘姿で、嬌舌をふるって煽りつけていた。

「ねえ。お米の値が騰貴して、わたしたちどうにも食べられないというのに、富豪とくるといい潮だとばかり、お米の買占めをやるんですものねえ、これじゃアだんだんお米の値は、騰貴するばかりじゃアありませんか」

すると群衆は口々に叫んだ。

「そうだ米の値は騰貴するばかりだ」

「そのあげくわたし達はどうなりましょう」

「餓え死ぬばかりよ。そうじゃアねえか」

「餓えて死ぬよりいっそねえ」

「やれ! 米屋を! うちこわせ!」

ワーッと群衆は走り出した。

伊勢町の辻では外伝が、こんな塩梅に説きつけていた。

「おおおお、お前たちついこの間、こんな面白えちょぼくれが出来た。