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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

……

「卑怯、おのれ、貝十郎オーッ」

「冬次郎様、卑怯は相互……ことごとく対等にござりまする!」

「織江をとらえ、ナ、何する気ぞ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

「お浦をとらえて、何するご所存※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

「持ったる将軍様お書き附けを……」

「それ取られましては田沼主殿頭様、立つ瀬ござなくいよいよ不利!」

「それにいたしても織江なんどを?」

「織江殿こそはかつて田沼様、想いを懸けました婦人でござれば……」

「すりゃ田沼に! 汝が汝が!」

「心慰さまぬ田沼様へ、犠牲として差し出し伽いたさせ!」

「穢らわしや貝十郎、おのれ鬼畜!」

「今宵一夜は貝十郎、織江殿の清浄保たせましょう。……その間にお浦をお返しくださらば、処女のままにてご返上! ……今宵過ぎればもはや織江殿……」

「待て待て返す、お浦は返す! ……今宵の内に、返す返す! ……それにいたしても汝という奴!」

「大友ノ黒主にござりまする」

「何を虚言! 何を莫迦め!」

「小町に草紙洗わせましてござる」

「…………」

「殿、……小町と……おなりなさりませ」

「…………」

「妹ヨーッ」

「お兄イ様アーッ」

お浦を担いで走って行く、新助と外伝との行手にあたり、一人の男が現われたが、不意に地面へ身を伏せた。