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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
我が家庭に対してすら共公心もなく想い遣りもなく何でも主人一人のわがままを通すような根性ではどうして共公の事業を遂げる事が出来ようか。市街鉄道の大騒動なんぞはその好的例でないか。人の家庭に共同心が充実するようにならなければ実業界の共同事業も到底円満に発達せんね。それにモー一つこういう事がある。我邦の政治家は明治の初年から国民に殖産興業を勧めて富を作れ作れと奨励した者だ。殊に日清戦争後は戦勝の余熱に乗じて中央銀行すら開放主義を執った位、盛に興業熱を鼓舞した。実業家も無闇に金儲金儲といって騒いだ。それがため一時は殖産興業も発達した、富も作れた、金も儲かった、ところがそれは一時の夢となって覚めての後は不景気に苦む事殆ど十年、寄ってたかって青い息ばかり吹いている。あれはちょうど人に大食をしろしろと勧めたようなものだね。勧められたものはただ無闇に腹一杯物を食べて一時は美味いとか面白いとか思ったろうが跡で胃病を起して五年も十年も悩んだと同じ事だ。人の身体に消化吸収の力を養わないで無闇に大食をさせたらその大食はかえって害になる。国民の品性道徳を養わないで無闇に金儲を勧めるのはかえって国民の害になる。