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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

冬の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页

青空文庫

料理法研究のためにとて中庭に仮の料理場を設け、テンピ、七輪、西洋鍋に至るまで来客の睹る前に順序能く並べられ、篤志の料理人両三輩各受持の仕事に取かかる。座敷の広間には長き食卓へ清らけき布をかけ、卓上の器物はいうも更なり、花瓶に挿したる美しき花々は自ら人の眼を悦ばしむ。席上に年若き紳士あり、金縁の眼鏡を眼の上ならで鼻の上の辺りに載せながら眼鏡越しに座敷の隅々まで眺め廻し「オイ中川君、少し君の説明を聞きたい事がある。君は平生何でも実用主義を唱えて風流は国の害だとか美文は教育の妨げだとか頻に我が党を攻撃されるが、この卓上に花を飾ってあるのは何の訳だね。この花も摘んで食べるという実用主義か、それとも卓上の装飾か」と言葉に角を立てて詰問するは同じ学校の出身にてつむじの曲りし人なんめり。中川は微笑を含み「無論装飾のためだ。しかし無用の装飾でない、実用の装飾だ」若紳士「これは面白い、食べられもしない花を飾って実用の装飾というからは天下何者か実用ならざらん。君はここに至て我党の主義に降参したかね」と妙に中川へ突かかる。中川は好んで対手にもせず「大層むずかしくなって来た。