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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

冬の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页

青空文庫

夏と冬とでその材料も違わなければなりませんがちょうど人の食物と同じ事ですから人が季節によって食べるものは鶏にも適当なので、つまり人の食物の屑さえ与えれば自然とその季節に応じて行きます」老紳士「毎日餌を煮て遣るのが少し面倒ですな、生物はいけませんか」中川「生物はいけません。生物を長く与えると色々な病気を起します。鶯を飼っても摺餌を拵える位ですから鶏の餌を煮る位何でもありません。つまり慣れです。慣れてしまえば火のあった処へかけておくばかりで少しも面倒でありません。鶯の摺餌よりよほど楽です。殊に我邦の人は平生火鉢の火を遊ばせておくでありませんか。万年スープでもかけるか鶏の餌でもかけなければ火鉢の火は何の用をなしません。それも腐ったものなぞを煮ると匂いがしていけませんけれども腐ったものは鶏にも毒ですから腐らない内に煮るのです。しかし人手がなくって餌を煮られないという場合には掃寄せ米か小麦の粃なんぞを与えてもようございます。つまり粒餌で小鳥を飼うようなものです」老紳士「そうすると直段が高くなりましょう」中川「粒餌にして一羽の食料が一日三厘位で済みますから一年に二百の玉子を産ませると玉子一つの餌代が五厘ばかりに当ります。