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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
あの長いのが俗にいう百ヒロで鶏の腸です。赤黒いようなものが鶏の肝臓です。肝臓に着いている薄黒い小さいものが胆嚢です。大い固いのが後胃即ち俗にいう砂胆です。ここで皆さんによく御注意を願いたいのはあの肝臓の大きさです。この鶏は無病息災であったから肝臓の大きさも三百目に相応していますが十羽の鶏を割いて見ると三、四羽は必ず肝臓肥大を起しています。色も少し悪くって大きさが身体不相応です。肝臓肥大は鶏に最も多いものでその肉を食べるのに差支はありませんけれどもあの肝臓を食べると害になります。しかるに昔し風の食物通は鶏肝といって大層肝臓の料理を悦んだものです。もっとも味はなかなかありますけれども自ら鶏を割いて健全なる肝臓を取出したのでなければ決して食用になりません。それから肝臓の側の胆嚢が肥大しているのも沢山ありますし、甚しいのは胆石病を起しているのもあります。将来家庭の養鶏が盛になって肉用鶏まで家で飼えば病鳥を料理する憂もありませんけれども今の世中はうっかり鶏を買うと病鳥が多いのです。つまり病気になった鶏をドシドシ潰して売出すからです。その外に多い病気が気管病と肺病で鶏を割いて見ると俗にいうドリ即ち肺臓が変色しているのも沢山あります。