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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
西京の松茸は匂いが高いばかりでなく茎が短くって太く肥えています。外のは痩せて長うございます。同じ西京といって西京ばかりでありません。その近所の山々から沢山出ましてその中に質の善悪はありますけれどもどうしても本場と申すだけ西京辺のは全体に良いようです。もっとも伊勢の播摩山の松茸なんぞは遥に西京のより上等だと申しますが沢山採れませんから外へ売出しません。今は東京へも諸国から松茸が参ります。東の方は上州太田の金山が名所でその近傍は野州の唐沢山辺まで松茸が出るそうですが西は濃州三州江州辺から沢山参ります。それが皆んな売物屋の手へ入ると西京の松茸と名をつけてしまいます。何にせよ戴いてみると味が違うから仕方がございません。この品物の中には昨日の朝採れたのも少しはありますが古いのも沢山ですから今私が新しいのばかり択り出しました。松茸は昼中採った物より朝早くまだ草の露のある内に採ったのが味もよし匂いも高いとしてあります。ここへ択り出したのは皆んな上等ですから御入用ならこの中をお持ちなさいまし」と今択り出したる松茸を盆の上に載せて妻君の前に置く。妻君それを売物屋の品と見比べ「なるほどこういう風に択ってみると上等と下等は大層違いますね」